8965円の商品を585個販売した金額はどう求めますか?ふつうは電卓や暗算になると思いますし、僕は最近では「OK Google、8965かける585」とスマホに話します。
このように少なくともExcelでは求めません。
なぜでしょう。
今回は単価いくらの商品をある販売個数を販売した、単純な掛け算だからですね。
では、次の問いかけです。10639円の商品を20%引きで38個販売した10%消費税込み金額ではどうでしょうか?
この場合でも、電卓で計算するでしょう。
では、どの段階からExcelで計算するのでしょうか。
単価×数量の計算式でも、その単価や数量がたくさんの種類があるときは、Excelで計算するのではないでしょうか。ひとつの掛け算の式を入力したら、その計算式を下にオートフィルして計算式をコピーして、様々な単価、様々な数量での合計金額の一覧表を作るときは、Excelになると思います。実際には、求めたい掛け算の計算式が1つか2つなら電卓で、それ以上ならExcelになると思います。
また、5870円の商品を120円引きし、130個販売し10%消費税を合わせた金額というくらいの計算式であれば、1個では電卓ですが、2個以上でExcelになると思います。
さて、この境界線を決めているものは何なのでしょうか。
それを深堀りすることで、Excelとは何が便利なのかという漠然とした疑問に答えが出ます。
電卓とExcelの違い
ここで、一般的な電卓とExcelの違いを考えてみましょう。
以下にあるように、電卓では計算値がゴールになりますが、Excelでは計算式を作成するのがゴールになることというのが一番大きいです。またExcelには計算式をコピーできる、元の値を入れ替えると答えが変わる自動計算ができるというのも大きいです。
電卓
- 四則計算をする
- 手軽
- 値を記憶する機能はあるが1つしか記憶しないし使い方が難しいので計算順に気を付ける
- ソーラーなら電源も不要
- 桁数が限られる
- 作成するのは計算の答え
Excel
- 複雑な計算ができる
- 計算式を後で見返せる
- 計算式内の値を入れ替えて計算できる
- 間違えた値は書き換えれば答えも自動で変わる
- 計算式がコピーできる
- 作成するのは計算式
- 関数が使える
Excelの計算の特徴
Excelの計算の特徴を考えることによって、Excelでは行う計算はどんな計算か、明確にしていきましょう。
電卓よりも起動が手間
Excelはパソコンの電源を入れ、Excelを起動する必要があります。この手続きが電卓よりも手間がかかります。一方で、その分高度な機能が使えます。
セル入力が基本
Excelでは計算の元になる値は基本的にセルに入力されます。これにより、元の値が変更された場合、関連する計算式が自動的に更新されます。セル入力による柔軟性があり、電卓での計算に比べると計算結果の修正が簡単に行えます。
相対的な計算
Excelでは計算式が相対的に位置関係で計算されます。例えば、セルC2にA1×B1の計算式を入力すると、「計算は計算式の入っているセルを基準に2つ左と1つ上の値をかける」という形で計算されます。この相対参照の特徴により、同じ計算式を他のセルにコピーすることが容易にできます。
計算式のコピーはExcelの最重要機能
Excelでは計算式がコピー可能であり、相対参照を維持したまま他のセルに貼り付けることができます。これにより、同じ計算を複数の場所で簡単に実施できます。
相対参照と絶対参照の活用
相対参照を活用することで、同じ計算式を複数の場所で再利用できます。また、必要に応じて絶対参照を使って計算の基準となるセルを固定することも可能です。
Excelはどう使うのがいいのか
結局、Excelはどのような使い方をするのがよいのでしょうか。今までの考え方を総合し、考えてみます。
値の入力
値の入力を直接補助する機能は、Excelにはあまりありません。1行ズレる、1列ズレる、1セルズレるといったことも簡単に起きますし、Deleteキーをいつの間にか押してしまったらそれでデータが消えます。
そういったことが起きないように、一覧表にはテーブルを設定し、入力規則で不正な値が入らないようにし、条件付き書式で入力ミスがあったらすぐに気づけるように目立つ表示をさせる、ということが必要です。
本当は自然に蓄積されたデータをどこかからダウンロードし、それをコピーして貼り付けられると一番良いでしょう。
計算式の作成
ここが一番重要なところなのですが、Excelの計算式は常にコピーして使うことを意識します。できるだけ1種類だけの計算式で済むようにし、同じような計算をする箇所は、同じ計算式でできないか考えます。何度も同じような計算式を作成することはしないようにします。
Excelは効率化するものと言われますが、この計算式を作る回数をなるべく少なくすることが、ショートカットキーを使って操作を効率化するよりも何十倍も大事なコツです。
そのために重要なのは、相対参照、絶対参照、列だけ行だけの絶対参照である複合参照を使いこなすスキルが必要です。つまり、そのセルの参照方法はExcelを使う上での一番の基本だと言えます。
またコピーはセルだけではありません。シートのコピーをすることで同じようなシートをいくつもゼロから作るのを防ぎます。ブックのファイルについても同じことが言えます。
グラフも同じようなグラフであれば、1つ作成し、コピーして元のデータを入れ替えるだけで値の違う同じようなグラフを作成できます。
計算書の作成
毎月、月次会議で、紙で使う資料のシートには、用紙の設定やヘッダーなど、印刷に関わるところまで設定しておきます。
元データを入力するシートと印刷するデータを集計するシートを別に設けて作成するものコツです。
Excelの計算式には、元のデータが変更されれば、その値に合った計算結果に自動的に変わる再計算機能があります。再計算機能を活用すれば元データにその月のデータを貼り付けただけで、印刷するシートが作成されるというようにすることができるのです。
再計算機能は、本来は間違って修正するときに役に立つのではなく、このようにデータを入れ替えたときに結果が一度に代わるようにするためにあると考えます。
そのように作成したファイルは、ただ保存しておくのではなく、テンプレート機能で保存しておくと毎回必要な項目だけ入力すれば印刷するシートが出来上がるようにできます。
まとめ
Excelを使う上で重要なのは、電卓で計算したり手で計算したりするより早く結果を求めることで、そうならない計算はExcelでするべきではありません。
Excelの計算の特徴は、なんと言っても計算式を大量に作る効率の良さと、関数利用による複雑な計算です。それが生きる計算式は、大量の同じ法則の計算が数多くある一覧表や電卓では無理な複雑な計算です。
大量に同じような計算式を1回だけ作成しコピーするのが重要で、そのためにはセルの参照方法をマスターする必要があります。これは難しく考えず「$」が付いた後が固定されると覚えれば楽なのではないでしょうか。
複雑な計算の中には、利息の計算のような微分積分が必要な計算もあれば、VLOOKUP関数のように、値の連携をするという計算も含みます。電卓では一覧表を一覧表として認識できないのですが、Excelはセルでできた表で計算するので一覧表を認識できます。だからVLOOKUP関数ができるのです。このように電卓ではできないこともExcelならできるのです。
これからAIが発展してきますので、ExcelでやるべきこともAIに流れていくと思いますが、AIをみんながExcelを使うように使えるようになるまではまだ先だと思います。
今は、Excelでやるべきなのかそうではないのかの境界線は、Excelでしかできないのか、電卓で計算するより早いのかで選択して、もしExcelで計算するときは計算式をコピーして作るということを心掛けて作るということが大事なのです。