Excelは何のためにあるのか

01-Excelの使い方

Excelは仕事において欠かせないものになっています。それはなぜでしょう。それをわからないでExcelを使ったり、勉強したりしても、おそらくわかりにくいと思います。

思い切って、仕事の経験がない中学生に戻って、Excelがなぜ仕事に役立つのか、具体例を挙げて考えてみましょう。

仕事とは何か、目的は?

Excelが仕事で役に立つことを理解する前に、仕事とは何なのか、根本に帰って考えてみます。

個人個人においては次のような理由があると思います。

お金

仕事は、生活を安定させたり、将来の貯蓄をしたり、趣味を謳歌して人間的な活動のためのお金を得ることができます。お金があれば、さらにスキルアップするための勉強や書籍のために使うこともできます。

スキルアップ

仕事を通してスキルアップをしたり、人間的な成長をしたりすることができます。仕事で起きる課題を解決していくことで、できること、わかることが増えていきます。知識的な成長のほか、様々な場面を経験することにより、余裕のある対処ができるようになっていきます。

社会貢献

仕事をするということは、その仕事が犯罪ではない限り、最終的に誰かの役に立つことをしています。誰かの生活を支える、誰かの困ったことを解決する、誰かに楽しいと思ってもらう、こういったことを通して、社会に対し貢献していけるのです。

人間関係

人間は社会性の動物なので、他者とのコミュニケーションが必要です。そのために、自分以外の人と考えを交えることをする必要があります。また、円滑なやり取りができるように成長しなければなりません。会社では先輩、同僚、後輩とのコミュニケーションが必要なので、自然と、他人との関わり方がうまくなっていくのです。

自信

仕事を積み重ねていくうちに、うまくいったと実感できる仕事も増えてくるでしょう。誰かの役に立った実感があれば、自信にもつながります。正しい自信は人間が生きていくために必要なものです。

わかりやすいように個人目線で紹介しましたが、今度はひとつの会社組織として、なぜ仕事をしているのかを考えていきます。

個人の仕事の理由とほぼ同じではありますが、突出しているのは「利益」を追及しているということです。

利益追求というと「なんだよ、お金儲けなのかよ」という感想を持ってしまいますが、利益を得た後には何があるのでしょうか。単純に貯めておくだけになるのでしょうか。

利益を出す理由は、「会社を大きくしていくこと」です。これは会社規模を大きくするというだけではありません。真の目的は、社会貢献につながるのです。

例えば、乳製品を販売していて、でもそうしても牛乳が飲めない子供もいます。そのような子供でも飲める牛乳があればより幸せな世の中になります。そのためには、誰でも飲める牛乳を研究し、開発し、製造しなければなりません。現状よりもお金がかかるのです。この新しいことをしていくために、お金が必要で、だから会社は利益を追求しているのです。

今よりもさらに社会貢献するためには、会社を大きくする必要があって、そのために利益が必要です。

利益とは

会社にとって、利益とは、お金のことです。同じような言葉に売上があります。その違いは理解できますか?

物を販売したら当然お金が入ってきます。それは「売上」です。

同時に販売すれば仕入れるのにお金もかかるし、作るのにも、販売するにも人の手が必要ですからお金がかかります。これは「費用」と呼びます。

「利益」とは、「売上」から「費用」を差し引いた残りの金額です。

言い換えれば、利益は今よりも増えた金額と言えます。

そしてその増えた金額を使って、新しいことをする「投資」を行えるのです。

Excelの会社での役割はたくさんありますが、お金の面でいえば、この利益の管理を行うのが一つの役割と言えます。

企業における税金は、売上ではなく利益に対してかかります。投資を行えば、その分利益から差し引けるので税金を払わなくて済むようにできます。いっぱい儲けたら、一つの選択としては税金として社会に貢献する様々なことに使われるお金として使用され、もう一つの選択としては会社として次の社会に貢献する事業のためのお金として使えるということになるのだと思っています。

例題として考えてみましょう。

ミカンジュースを製造販売するとしましょう。販売価格が300円、1,000個作ります。その時の材料であるみかんは全部で60,000円購入します。時給2,000円の人が2人1日5時間で5日働き製造します。販売には時給2,000円の人が2人で1日5時間2日働きます。

この場合の利益を計算してみましょう。

売上は、単純に販売価格と個数をかけ合わせれば出ます。

売上=300円×1000個=300,000円

費用は、材料費と製造する人件費、販売する人件費を計算します。

材料費=60,000円

製造の人件費=時給2,000円×2人×5時間×5日=100,000円

販売の人件費=時給2,000円×2人×5時間×2日=40,000円

費用の合計=材料費60,000円+製造の人件費100,000円+販売の人件費40,000円=200,000円

利益額は次の通りになります。

売上300,000円-費用200,000円=100,000円

この事業では利益を10万円出すことができたので、例えば次の材料を10万円分買って消費者にまた商品を届けるといった社会貢献が可能になりますね。

そして利益と同時に大事なのは、売り上げ全体に対する利益の割合である利益率です。これは利益を売上で割って求めますので、次のようになります。

利益率=利益100,000円÷売上300,000円=0.33333=33.3%

この利益率はどう大事なのかというと、売り上げ目標をいくらにすれば必要な利益が求まるかを計算できるようになります。

次の社会貢献のための事業をするのに300,000円ほしいとなったとき、では300,000円の利益を上げるのには、次の計算ができます。

必要な利益300,000円÷利益率33.3%=900,900円

この金額を売り上げるためには3003本を売る計算になりますので、そのつもりで仕入れや人材確保をします。

実際にはすべての商品が売れる保証はありませんし、材料を大量購入したらいくらか安価で購入できるので、一致しないことの方が多いですが、基本はこの通りです。

Excelはそもそもなんなのか

今度はExcelというものについて考えてみましょう。

Excelは表で計算するものです。

表になっていることで、見た目での電卓での計算との大きな違いは、計算のもとになっている値が残っていること、それらが何か明確に項目名を記載できることです。

上記の利益の計算は、電卓での計算方法を紙にメモしたようなものです。

内容はわかりますが、一目瞭然、というわけではないです。

次は同じものをExcelで表したものです。

それぞれの内訳が計算されていき、最後に利益率が求まっていることが明確にわかりますね。

さらに、Excelでは入力された値を直接式の中に入力するのではなく、元の値の箱、セルの位置を使って計算できます。

「=1+1」と入力するのではなく、「=A1+B1」という数式で値の入っているA1という位置のセルとB1という位置のセルの足し算ができるのです。

このように式の中でセルの位置を使うことを「参照」と呼びます。参照をした式では大きなメリットがあります。

もしも、販売金額を350円にしたらどうなるかを見るのに、電卓であればまたはじめの売り上げから計算しなければなりません。しかし、参照を使った計算しておけば、販売金額の300のところに350と入力するだけで、売上計を計算し、その結果を使って利益を計算し、その結果を使って利益額を自動で、一瞬で求めます。

このような仕組みのおかげで、販売金額を変えたら、材料費を価格交渉して下げてみたら、時給を変えてみたら、働く人の数を増やしたら、といったいろいろなケースでの利益を一瞬で調べることができます。

また、Excelはいろいろなことを自動的に行うことができます。利益は最低でもマイナスにならないのが基本で、それを「損益分岐点」と呼びますが、そのためには価格をいくらまで下げられるのかということを出すのに、細かく人間が販売金額を1円ずつ変えていくのではなく、ゴールシークという機能で、利益が0になる価格を見つけてくれる機能もあります。

つまり、Excelは、計算のもとになるすべての値をセルに入力でき、その値を使って計算式を作ることができる。元の値を変えれば結果が自動ですべて変わる。結果を逆算するなど便利な機能も充実しているもの、ということが言えます。

また、表形式になっていることで、単に数値だけではなく、その数値が何なのかラベルを付けることもできるし、色や線もきれいにつけることができるというメリットもあります。

しかもその表も、自分で好きなように自由に作って配置できるのです。

仕事でExcelを使って何に役立つのか

Excelでは、このように売上や費用を細かく記録できること、それを集計することができること、見やすくできること、といった役割があります。その中でもやはり代表的なものは、売上と費用が現状どうなのかがわかるようにすることです。

そのための分析した表の代表が、目標達成率と前期比と売上構成比の表です。

ものを販売する上で、次の社会貢献をするための活動資金の利益を得るための売上金額を「目標」として設定し、それに向けて同製造し販売していくかを考えていきます。

また、目標のほかにその商品は前に比べて売れる傾向にあるのか、それとも売れなくなってきているのかを調べる、前期比という考え方があります。前月比の場合は、今月の前の月との比較をします。

どの商品が一番売上を引っ張っていて、どのくらいの割合か、という尺度がわかれば、これから力を入れるべき商品がどれかわかってきます。これが売上構成比です。

その一覧をExcelで作ると次のようになります。

Excelでは表なので、縦横に情報を分けられるので、何回も項目名を書くという必要もなくスッキリとしたレイアウトになり、一瞬で何を表しているかわかるのです。

この表では、各商品の目標額と先月実績と当月実績の12セルだけが数値入力され、他の数値はすべて計算で求められています。こうすることによって、すべてを入力する必要もありませんし、計算ミスも防ぐことができます。

また、計算式を使うことで、来月も12セルの数値だけを入れ替えれば、この計算式が自動で来月用の計算を行ってくれる、そのような自動集計表を作り上げることもできるのです。

Excelはこのように、自動的になにができるようにすることによって、効率的に仕事を勧められるようにするための道具なのです。

また、金額ではないものの代表としては在庫管理があります。

在庫は、入庫数から出庫数を引くだけで求まりますので、次のように商品ごとに入庫と出庫の値を入力すれば、在庫は計算で自動的に求まります。

実際には、計算しなおしをする仕組みを使って、もっともっと使いやすい在庫表も作ることができます。

Excelの仕事での位置

さて、ここまで便利なExcelなので、よく勘違いしてしまうのですが、ほとんどの場合は、Excelを使うのが仕事ではありません。Excelを使うのは、単に道具として使うだけで、本当の仕事は、サービスだったり、モノ作りだったり、販売だったり、営業だったり、事務だったり、経営だったりするのです。

仕事において、Excelはその本来の仕事に集中するため、本来の仕事以外のものをできるだけ自動的に終わらせたり、短時間で効率よく終わらせたりするための道具なのです。

日報を作るのに、今日の仕事の成果の個数をメモ帳から1個1個電卓で計算して合計を出すのではなく、仕事の成果があるたびにExcelに入力しておいて、あとは計算すれば合計が出せるようにすべきですし、もしくはあらかじめそういう入力して自動計算をする計算書を作っておけば、仕事の最後にそれを印刷するなり、PDFにしてメールで送信するなりするだけで日報を書く作業は終わるのです。

そのようにExcelを使い、パソコンを使っていくことが、本当の仕事の姿で、書類がないからいちいち探す、という時間を過ごしてはいけないのです。

つまり、仕事において、Excelは、本来の仕事に集中するために使うものと言えます。仮に将来、Excelよりも素晴らしい効率の良いものが出てくればExcelではなくても構わないのです。

今のところ、汎用性を考えると、仕事の内容を記録し、それを集計するということにおいて、Excelほど優れたものはないという状況です。

Excelは仕事だけのものか

Excelは仕事だけの印象がありますが、様々な創作活動もでき、そこでの自己表現を助ける使い方もできます。

例えば、演劇の台本作りは、本来Wordの役割なのですが、効率よく脚本を作ると考えるとExcelの方がやりやすいのです。詳しい説明は次の記事でしています。

台本フォーマットはExcelが向いていたってお話

表の構造をうまく使って、図形をうまく配置して芸術的な絵を描いている人もいます。

表のブロックでコピーができるので繰り返しのものを作るのにも重宝します。そのことから、おそらく音楽制作も得意です。

個人での使い方としては、株価の予測の手伝いもできますし、将来の投資に対するリターンとリスクの計算も得意です。

このように、仕事だけで使うと考えずにExcelを趣味や個人レベルでの楽しみで使うという付き合い方も、Excelのスキルアップには効果的です。

まとめ

Excelは仕事の内容を記録し、また、その内容を集計することで、利益の状況を把握したり、売り上げの分析をしたりすることで、会社これからの方針を決めることができるツールです。また、在庫管理のように、数字に関わる様々な計算書を作成することで、正確に効率よく仕事ができるようになります。

トラブルが起きたらトラブルの種類や状況をカテゴリに分けて記録しておけば、どんなパターンでトラブルが起きやすいかということも分析できます。

記録をパソコンに入力しておけるということは、1つの目的だけではなく多くの目的でそのデータを活用できます。

単に会社の成長のために売上と費用を記録していたとしても、その内容を使って税金の計算ができます。また、算出した利益やその成長率、収めた税金額は社会的な信用にもなります。その集計した結果をきれいに一目でわかるように表だけではなく、Excelのグラフ機能でグラフにした資料を作成し、銀行に見せれば、これから社会貢献するための金額を融資してもらえることに繋がります。

そのためには、Excelにはどんな機能があって、どんなことができるのか、それだけではなくて、機能と機能を組み合わせたらどうなるのかという研究も、誰かがExcelの裏技を発表していたら自分ではどのようにその裏技を活用できるのか想像することも重要です。

それには、勉強というよりも、新しいことを発見する、という楽しみを持ち、それが最終的に社会に貢献することに繋がることを実感しながら、Excelに触れ合うことがとても重要です。

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