読書感想文「スペースキーで見た目を整えるのはやめなさい~8割の社会人が見落とす資料作成のキホン」

この本で感じたこと

「Wordで空白行とスペースでレイアウトするのは撲滅!」
ってずっと言ってるのですが、ついに世の中にそういう本が現れました。
できれば私自身がそういった本を手掛けたかったのですが、そういう意味では超悔しいそのですが、何よりもこの考え方が普通であると認識できたので、その価値は私にとってはとても大きなものでした。


こんなことをつぶやいたとたんにものすごい数のいいねとリツイートをいただき、ありがとうございます。
この反応の多さの原因は、技術評論社のセンスと著者の先生が持ってる問題意識の正しさにあると思っています。みんなが思っていたことなのに、そういう情報がほとんどなかったという点において、問題提起をする、これはとても勇気がいる事だと思います。
その判断が今回は見事に的中したものと思いました。
この本のタイトルの通り、パソコンで作ったドキュメントをスペースキーで見た目を整えることを世の中はよしと考えていないということが、如実に表れた結果と思います。
なぜスペースで開けてはいけないのかということに関しては 、様々な理由があると思います。コンピューターのデータとしてあってはいけないものは一つたりとも入れてはいけないというのが原則です。
私は何のためにそれをしなければいけないかと考えているかと言うと、ズバリ検索のためです。「りんご」は「り□ん□ご」ではないし、「スカート」は「スカート□□」ではないからです。
Word文書で検索なんかしないよ、関係ないよという方は逆に幸せなのかもしれません。
私はたくさんの文章を作るので最近よく Word の文章をなくします。パソコンのどこかにあるはずなのですがどこにあるのかわからなくなります。
そんな時、最近のパソコンは優秀で、セルの中に「金額」って入ってても、文書の中に「金額」って入っててもそのファイルを検索してくれます。
そうやって文章を探す時間を短縮することができるのは、「金額」を見た目を良くするために「金□額」と入力しなかったからなのです。
日本の文書作成文化は昔のワープロ専用機の時代から実は文化があまり変わっていないような気がします。
当時からの文化は次のような文化でした。
文字は紙のどこにでも打てること。
何をするか機能を選択してからその範囲を選択すること。
縦横の文字数は必ず決まっていること。
文字は等幅フォントであり、全角と半角の2種類の幅しか存在しないこと。
今もその文化は残っています。
どこにでも文字が打てないからWordが嫌い。
文字を打ったらすぐ書式を設定したい。
なぜ1行の文字数がバラバラなのか。
これは本当に今だ Word を使っている現場から言われることです。
この本は、令和の今の時代、その考え方は古いと、Wordで文章を作成するということはそういうことではないということを真正面から言っています。

できることは機能でやる。妥協はない。

これが今のパソコンの使い方です。
ごまかして使うことはもうやめましょう。
そういうことを気づく本です。

書いてあるスキルのレベルは、パソコン講師の先生が執筆されているのであくまでMOSベースだと思いました。今MOS研究に力を入れている私がそう思うんですから。
MOSの出題範囲や、FOMの問題集で試験対策をした時に出てくるようなテクニックを使って操作することを紹介しています。
つまり、MOSスペシャリストなら5割は、エキスパートなら全部がもうすでに知っていることなのです。
ただ大事なのはその機能の使い方です。どういう時にその機能を使うのか今までわからなかったことはあると思うのですが、それが明確になります。
MOSに合格して実感のなかった人が、実感を得るには最高の本だと思います 。

内容に関しては Excel と Word が交互にテクニックの紹介をしているので若干混乱する可能性もありますが、ちょっと気になったところではあるのですが、もしかしたら、 Excel でしか文章を作っていない人に対して Word で文章を作ればこういう風に作れるんだよというメッセージを発信したかったのかなと思います。
現に Excel でしか文章を作っていない方が Word で文章を作る動機付けができるような本になっています。

どんな人に読んで欲しいか

実際に私がこの本を届けたい方には残念ながらこの本は届きません。
この本が問題視している今のやり方の問題意識に気づけない層の方はこの本のレビューを見たって興味は湧かないと思います。
まずは、今、仕事で文章を作成していてレイアウトにとにかく困っている人。そういう方に届けたいと思っています。
あと絶対に届けたいのはExcelでビジネス文章を作っている方です。
具体的には次のような方々です。
・契約書や法務文書を扱う法務や法律事務所、書士の方。
・試験問題プリントを作る学校の先生。
・マニュアルを整備しなきゃいけない医療現場。

タイトルだけを見ると

今回私がツイートしたことに対しての反応で多く見られたのは、スペースがだめならタブでやればいいということです。
タブ機能でスペースが空くことは皆さんご存じなのですが、大事なのはタブはバネのように大きさが伸びたり縮んだり、縮みすぎるともっと大きくなったり、という文字だというところに注目したいところです。
タブのバネの大きさの調整はタブとリーダー機能で行います。
タブを入れるだけではありませんきちんと Word の機能を使って大きさを調整しようという話です。
そのことによって文字数が違ってもきちんと揃う文書が作れるということになります。

この本の魂

この本は機能紹介がたくさんされているので一見普通のオフィスソフトの教科書のようにも見えます。でもきちんと隅々まで読んでいくと、ビジネス文書のあるべき姿が浮かんできます。パソコンで作る以上パソコンらしく機能を使って文章を作りましょう、そう語りかけてくるのです。 そこまで読み取ってこそこの本の価値だと思います。ただ機能だけを覚えてそれで終わりであれば、この本の価値の1%も引き出せていないので、隅々まで考えながら読むということをお勧めします。

願うこと

この本に書いてあることが普通になるといいなと思っています。
パソコンを買った値段の100倍の価値にする、そのためにはパソコンをパソコンらしく使うことが必要だし、パソコンに対して手入力をする、コピーする、データを探す、見た目を整える、こういったことを人間が目で見て調整しなければいけない時代が早く終わればいいなと思っています。
そういった意味ではちょっとこの本は世の中に出るのは早いのかなとも心配していましたが、ツイートの反応を見てその考えは吹っ飛びました。
この本の持っているメッセージ性を正しく理解している方がこれほど多いのかと。
この本一つで世の中が私の理想とするコンピューターの世界観に変わってくれるというのはちょっと無理があるかなとは思います。でもそのきっかけにはなって欲しいと思っています。
本当に望むのはこの本のメッセージが、今の文書作成の問題点に気づかない人達にも届きますように、心の底から願います。

コメント

  1. hide0501 より:

    同感です。
    Excelのセル内に箇条書きで書いた文字列を、スペースで見た目を整えるアホが会社にいる。
    そのため、フォントの種類やサイズによって箇条書きのbulletがずれて見にくい。
    Alt+Enterのセル内改行を使えと言って差し戻すが、全く直ってないものを再提出するので、理解していないようだ。

    • セル内改行も体系的に折り返して表示やセル内の上下左右の揃え、セルの幅、フォントとサイズなんかと連動して覚えないと把握できないのかもしれないですね。
      そういうのを広める機会があればいいのですが。

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