震災とパソコン活用第四回「教訓を1000年後に届ける」

震災とパソコン利用についてのお話は今回が4回目で最終回になります。

震災から10年たつ中で、どんなことが大変だったか記憶が次第に薄れていくのは私自身感じています。

揺れたら火の始末をするくらいで、逃げるルートを確保するためにドアを開けたり、揺れ終わったら断水する前に水を確保したりするといったことまではしなくなりました。

津波が襲ってくるという感覚も鈍ってきていて、もし沿岸部にいたとしてもすぐに安全な場所に逃げようと思うか、想像すると、もしかしたらすぐに行動しないかもしれません。

やはり当時の危機感は保たれていないような気がします。

今回クラスの震災は1000年に一度と言われています。今、10年でそれだけ危機意識が下がってしまったのを1000年後に伝える方法はないのでしょうか。

石碑を立ててここまで津波が来たということをわかるようにしたものは、おそらく1000年もでも残っているでしょう。

しかし、リアルな実感として、これだけのことが起きるのだから危険だ、とか、「つなみてんでんこ」に代表される、非常時ノウハウはどうやった共有されるのでしょうか。

語り部の方の活動も重要です。今、若い方も語り部で活躍されています。今は実際に体験した方が語り部になっていますが、次の世代に繋いだ時には体験されていない方が語り部になるでしょうから、そこで伝える印象がどうしても変わってしまうことは避けられないでしょう。

そこで情報の劣化がない、ITの技術がどこまでそれをサポートできるかが注目されます。

今回の震災が起きた時点ですでにYouTubeがあったので、数多く残っています。

NHKでは、映像素材を未来に向けアーカイブする仕組みがあります。

アーカイブス編:貴重な映像資産を次世代に伝える

YouTubeにしても、増えていく映像コンテンツを格納する領域がどんどん増えていて将来にわたって考えれば無限の保存スペースがあるようにも思えます。

しかし、これらのデジタルコンテンツは、ファイルの保存形式が、高品質でファイル容量が少ない形式が発明されたときに、そこに保存されているコンテンツが再生できるのかどうかが課題になります。次の世代に受け継ぐためには 廃止になるファイル形式から新しいファイル形式への変換が必要になります。

これは、個人レベルでもそうで、震災の時に記録した写真やビデオをハードディスクに入れておいて、再生しようと思ったら、もうその時代では 再生できなくなっていることもあるかもしれません。

もう一つ、個人レベルでの情報の保管に関しては気を付けなければいけないことがあります。保管しておくものの耐用年数です。CDやDVDは半永久的に記憶できると言うことが言われていましたが、実際には保管状況によっては2年くらいでデータが呼び出されなくなってしまう場合もあります。保管状況が良くても100年もすればCDの表面をコーティングしているプラスチックが変形し始めて歪んでしまい、データが取り出せなくなります。

ハードディスクも磁気で保存している以上、磁力はだんだん弱まり、最後には記録されている内容が呼び出されなくなります。

このように物理的に壊れてしまうということは念頭においておかなければいけません。そのためには数年に一度ファイルを別の保存場所にコピーするという作業が必要になってきます。容量が大きければ大きいほど大変な作業になります。このコピーの作業の操作ミスによって情報が失われる可能性もあります。

今はクラウドがあるので、よほどクラウドがいけないものだとならない限り、クラウドが一番安定してデータを保管できるかもしれません。ただ、そのクラウドサービスやサーバーのサービスが終了してしまうとその中のデータは消えてしまうという懸念があります。

結局、今のところ100%安全に1000年後に情報を伝える技術はないのかもしれません。 その中でその時代時代に最も安全な保管方法でデータをコピーし続けていくことがベストな方法なのです。

映像形式を変換するときはもしかしたら劣化するかもしれませんが、そうではなければ、幸い、デジタルデータは基本的には劣化がないので当時の記録そのままを情報としては永久に後世に伝えることができます。それがいつまでも続くようなサービスが求められます。

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