人を幸せにする自動化

パソコンで何でも自動化できるようになると、アナログ人間の私には向いていないだとか、冷たいように感じるだとかそのような印象を持って、なかなかデジタル化、DX化に抵抗感が出てしまう時もあるようです。

でも、自動化をすることで、効率よくなるだけではなく、サービスの質を向上し、提供する方も提供されるほうも幸せになれると言う結果になったことが何度かあるのでそのうちの1つを紹介します。

人は頼られてしまうし頼ってしまう

相手に、言ったらなんとかなる、多少ルールに逸脱することでも交渉の余地がある、という甘えを持って、人と交渉する人が少なからずいます。それに対して、要望をかなえたいと思うのが人間です。

しかし、それはルールから逸脱したものであり、組織のルール以外のことを個人で判断して例外を作ってしまうことで、他の顧客との間にサービスの差や不公平を発生させてしまうものです。

また、その交渉は時間がかかるものであり、結果をどうするにしても双方にとって時間の無駄ともいえます。

上司からの命令で「タダでやってもらうように交渉しろ」とか、納期目前になってやらなくてはならないことに気づいたとか、そういうことは会社組織では結構あることです。

でもそれは、筋が通らないものは通らないし、ルールの中でできるものであればできるしという、たったそれだけの単純な基準でやるかやらないかが決まるだけではないでしょうか。

システム上出来ないから

昔、私は上司から「消費税分安くするよう交渉しろ」と言われました。その通り発注元に交渉したのですが、「安くすることはできるけど、消費税をどういう形で計上するのか、仕組み上できない、どうしたらいいだろう」と言われました。

ものすごく世の中の常識がわかってなかったようで、私自身として、会社として恥ずかしく思いました。

世の中にそのような納品や会計を司るシステムがあるということも思い知らされましたし、そのような仕組みでできないものが決まっているということがあるということもその時気づきました。その時に自分の仕事がままごとのように感じました。

上司もそのような感覚を持っていなかったので、説明するのにとても時間がかかりましたが最終的に納得してもらうことができました。

担当レベルや実際にはやりたくても、システムで決まっていることはできない、社会の常識的にやってはいけないというのが社会で生きてくための決まり事だと私は感じたのです。

殺到に対応する

私が印象に残っている自動化があります。

設備予約を紙の予約表に利用者に、いつだれが使うか、記入してもらっていたのです。予約が殺到すると何十人と行列ができました。もちろん、手書きで書いているので同時にブックキングしてしまうこともありました。

最も大変なのは、希望した日に予約ができないと言われてスケジュールを調整したり、時期によっては、予約することを知らない人が認人もやってきて今すぐ使わせてもらわないと困ると言われたりするようなことがあり、その対応に1人15分程度の時間を要しました。

そこで、できるだけ操作が簡単な予約の仕組みを作り、その装置の前に設置しました。「予約システムで予約することになりました」という張り紙と一緒に。

すると、あれだけ大変だった設備の使用管理が、ほとんど対応せずによくなりました。

あまりにも少なくなったので、一時はサービスの質を落としたかとも思ったのですが、利用者のほとんどは予約の画面を見て、予約できなければ自分でスケジューリングを考えるようになりました。今すぐ使いたいという利用者も、開いている時間を見てそこで使うようになってくれ、それでも使えないときは自分たちで代替手段を自主的に考えるようになりました。

サービスの低下なのか向上なのか

これは人間の手間という意味ではかからなくなったので、それを基準としてサービスを考えるのであれば低下と言えるでしょう。しかし、予約がスムーズに行くようになった、結果、予約の殺到で行列に並ぶ必要がなくなった、一人一人が自主的にスケジュールを調整するようになったという意味では有意義なものだったと感じています。

人間が苦労する=サービスの向上という価値観では得られない価値を創造したと言えます。

システム化の意味

システム化することで、逆に今までオーバーサービスだったものを最適化したとも言えます。

本来は顧客側で考えて決定しなければいけないことにまで対応するのは、余計なことなのかもしれません。それが一人の顧客、顧客全体、対応する企業、すべてにメリットがあるのであればやってもよかったのですが、どこか一つに負担がかかってしまうようなやり方は良くないと思います。

この例では、ある意味、顧客の甘えさせないようにしたことになります。そう言ってしまうと悪いサービスになったのではないかととれるのですが、顧客の成長を促すということはその顧客にとっても大きなメリットになるでしょう。

その上、業務自体が整理されて行列になるようなデメリットもなくなったので、このシステムは大成功に終わったと私は自負しています。

よく、システム化するというのは効率化、時短、と言われますが、それは目先のコストダウンではなく、このような意識改革までを見込んで、意味があると思います。

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